Lazy Cosy Home 

イギリスでDIY 家改造、菜園、保存食作りなど 土臭くやっています。 

義父と我が家とスクウォット

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 ここへ越してきて二年半経ったもの、未だ半壊状態のこの家。
元は仮住まいのつもりでいましたが、あと数年はここに住むことにしたので
もう少しまともにしていくことにしました。

我が家は本来であれば寝室が三つある立派な家です。
こちらでは典型的なタウンハウスと呼ばれる連なった作りの建物で、壁と煙突を隣と共有していますが中は一戸建てとそう変わりません。
しかし二階は全く使える状態ではないので、一階スペースでのみ生活しています。
我が家と言ってますが、実際ここは旦那のお父さんの持ち家です。

この家に住むことになった成り行きですが、
当時の私達は長い旅を終えたばかりでまだ結婚など考えておらず、とりあえず私の観光ビザが切れるまでは彼の地元に滞在するというつもりでした。
始めは義母の豪勢な家に居候させてもらっていましたが、お互いに気も使うのでそう長くは居座れません。そこで旦那から、「ボロいけど家賃なしで誰も住んでいない父の家がある」と提案があったので早速見に行くことに。
同じ町内のメインストリート近くにその家はありました。思ってたよりもちゃんとした外見だったので、期待しながら中へ入って見ると

そこはまるで廃屋の様でした。
埃まみれで、汚れた服や食器など雑多な物が散らばっている。
壁のペンキは剥げ落ち、漆喰が崩れて剥き出しになったレンガが見える。
床から釘が飛び出し、天井すらない所もある。
……夜逃げか?それとも何か不吉な事が…と連想させる程に廃れている。 

「こんな状態だから家賃を払う必要などない」と言う旦那。
以前の私でしたら、こんな廃屋に住めるか!などと言ってたと思いますが、
これまでの数年間はバックパッカーのたこ部屋、キャンプや車の中などで
暮らしてきたお陰で、輪を掛けて土臭く逞しくなった私は、
「屋根と電気にプライベート空間まであるだけマシ」と思えるようになりました。
タダで住めるのなら、何とか住めるようにしようと頑張ることにしたのです。

さて、この家がなぜこんな状態なのかと言うと。
旦那が産まれた30年程前、義父と義母はバーゲン価格だったこの家を見つけ、
改築して高く売ろう!と投資目的で購入しましたが、勤め先の農場に家を持っているのでここには引っ越してきませんでした。
元々この計画は義母の勧めが大きかったようですがその後離婚してしまい、
スーパーマイペースな義父が本気で改築に取り掛かる日はやってきませんでした。

これまで義父の子供達4人(旦那の腹違いの姉と兄三人は10才以上年上)、
前の奥さんとその新しい家族、農場で働くポーランド人達などが住んできました。
旦那も学生の頃は空き家だったこの家でパーティをしたこともあるとか。

何年か前にしっかり者でガス管関係の仕事をしている長男の義兄が見かねて、
やる気を出しました。家中にセントラルヒーターを設置し、台所やバスルーム、
窓枠やドアなどを新しい物に付け変えました。
しかし働き者だが、家の事に関しては時間もお金も使いたくない義父。
今後の計画や費用の相談をしてもなかなか進みません。
なので結局、忙しい長男は匙を投げてしまいました。

その後は三男が引き継ぐ事に。
設備は一新されても1930年代に建てられたこの家は至る所に限界がきていて、
家全体の改修が必要でした。
彼は何年かの間ここに住み、壁の漆喰や天井を取り外すなどしてきたようですが、
長男のようにしっかり者ではない三男は、何故か全てを放ったらかしたまま
どこかへ去ってしまいました。

それから更に数年が経ち、この家に住むことにした私達の最初の仕事は、
三男の残した薄汚れた荷物や食材、ベトベトに油の固まったオーブンなどを
片付けることから始まったのです。

私はここに住むことを“合法スクウォット”と呼びました。
スクウォットとは何らかの理由で所有者がいなくなった廃ビルや空き家などへ
勝手に住みつき、占拠してしまう事です。 
私達はもちろん所有者に認められていますが、気分的にはそんな感じでした。
というか実際にこの家でも、以前に誰かが勝手に寝泊りしていた形跡を見つけた
ことがあるらしい。

あの頃に比べると百倍は良くなったと思いますが、必要最低限しか着手しておらず大きな改装はしてないので現在も普通の家と呼べるような状態ではありません。

「義父は今後この家をどうするつもりなのか」
というのはもはや一家の謎となっています。わかっているのは、
“これからもこの家に住む予定はなく、空き家であるよりマシなので私達が住むことにも異存なし。“ということだけ。
いつかは改築を完成させ売るつもりでいるようですが、なぜか誰にもはっきりとした事を明かしてくれません。

とまぁ失礼なことばかり言ってきましたが、凄くいい人でちょっと変ユニークな義父にはお世話になりっぱなしなので、感謝の気持ちしかありません。

旦那のDIY精神と手先の器用さは義父譲りでして、“工具の図書館”と呼んでいる程
彼の家には何でも揃っており、廃材その他いろいろな物を譲ってもらったりと
よく助けられています。
彼がマネージャーを務める農場は、以前かなり大規模な場所でした。
80年代にはひとつのグリーンハウスが世界一大きいとしてギネスに載った事もある程で、外国からの労働者もたくさん来ていましたが、段々と縮小していき昨年ついに閉鎖することが決まってしまいました。
とても残念ですが、そのような状況なので農場で使われなくなったあらゆる物を
使用できる環境なのです。

何だかんだやっているうちにこの家にも愛着が沸いてきたし、(あとタダだし)これから数年の間も住ませてもらうことになりました。
なので家の事について義父といろいろと相談したいこともあり、お礼も兼ねて食事に誘っているのですが、やはりなかなか時間を取ってくれません。

そんなことを経験者である長男の義兄にこぼしたところ、
「マックス(飼ってる犬)に何かあげる物があると言って呼んでみたらいいよ」
と言われて、なんでやねんと思ったら
奥さんと子供以外には協力を惜しまない
と家族内でジョークになっているとか。やっぱりちょっと変わった人であります。